A Proposal to Cover the Uninsured in California - Health Affairs
(Published online December 12, 2006)

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  1. 基本方針

    加州には、全米の無保険者の10%がいる。また、無保険者の中には低所得者の割合が多く、医療保険プランを提供する企業の割合も低い(※「Topics2006年5月2日 CAでMA法案が入ったら…」参照)。そうした意味で、MA州を参考としながらも、異なるアプローチが必要となる。

    本提案は、州レベルで、企業、個人、州政府に参加を求めている。本提案は、2年以内に実現が可能であり、結果として、皆保険制度に限りなく近づけることができる。

    本提案を行うに際し、次の10の基本方針を掲げた。

    1. 現存する公的医療保険プランの加入者を増やす。
    2. 低所得者層の無保険者に、基本的な医療保険プランを安く保証する。
    3. 医療保険プランに加入していない中高所得者のプラン加入を促す。
    4. 医療提供サービス(公私とも)のセーフティネットを強化する。
    5. 必要となる補助金のために、安定した財源を確保する。
    6. 各個人、各企業に医療保険プランへの加入を促すインセンティブを用意する。
    7. 現存する企業保険プラン、個人保険プランの市場を、大きく崩さないようにする。
    8. 連邦のMedicaid資金を最大限活用する。
    9. 管理コストを最小限にとどめる。
    10. データベースの作成に最大限努力する。

  2. 制度提案

    主な提案概要は、下図(本文P.3)の通り。なお、CalPrimeCalCATは、新制度として創設。 EX1

    1. 個人のプラン加入義務

      州税申告時に、本人及び扶養家族が、必要最低限の医療保険プランに加入していることを併せて申告しなければならない。また、中高所得者層からの保険料徴収(後述)には、所得税の源泉徴収システムを活用する。

    2. 低所得者層

      連邦poverty level (FPL)の300%未満の州民には、MedicaidまたはSCHIPへの加入を求める。これら公的医療保証プログラムの資格要件を満たさない場合には、新設の"CalPrime"に加入する。

      CalPrimeでは、3つの要素を組み合わせた、4つのプラン選択肢を用意する。3つの要素とは、次の通り。

      1. 基礎的プラン
        年間$2,000分の外来診療、処方薬、救急医療をカバーする。外来診療、一定の処方薬に関する自己負担は$10。

      2. 免責額
        基礎的プランと組み合わせたうえで、予め決められた免責額を超えた医療サービスは、すべて保険で償還する。本提案では、免責額の選択肢として、$10,000、$2,000、$0の3通りを用意した。

      3. 総合保険
        予め決められた免責額を超えた医療サービスは、すべて保険で償還する。


      保険料に対する補助金は、FPL 200%未満は全額補助(100%)。FPL 200%から補助率を逓減させ、FPL 300%では補助率50%とする。

    3. 中高所得者層

      FPL 300%超の所得者については、カタストロフィック保険を義務付ける。

      • 民間保険
        州税申告前に、個人または企業が購入する。州税申告書には、購入したことを明記する(自動車保険と同様)。

      • 公的保険
        公的保険プランに加入している場合には、新設するCalCATに加入する。CalCATは、保険加入を証明できない州民を自動的にカバーする。加入者は、公的プラン加入時に、付加税を支払う。CalCATは再保険システムで、免責額は$10,000とする。

      • MRMIP (The Managed Risk Medical Insurance Program)
        医学的条件により医療保険プランに加入できない人達のために保険を提供する現行プログラム(MRMIP)を利用して、保険料を変更せずに、CalCATよりも総合的なプランを提供する。


    4. 加入者推計

      これらの制度改正により、無保険者の85%、約470万人をカバーすることができる。その結果、98%の加州民が医療保険でカバーされることになる。

    5. 医療の質の向上に向けたIT (略)

    6. 諸前提 (略)

  3. プラン費用推計及び財源

    プラン選択肢毎に必要となる月額保険料、補助金総額は、下図(本文P.8)の通り。

    EX2

    1. CalCAT

      CalCATは、保険料のみ、州補助金なしで、独立採算にすべきと提案している。Medicareと同様の償還率とすると、成人一人当たり年間$1,200、子供$600が必要となる。

    2. 新財源

      CalPrimeの運営、Medicaid、SCHIPの新規加入者分、MRMIPの財源を賄うために、2つの新財源を提案する。

      • 医療サービスに州売上税を課税する。
      • 医療保険プランを提供していない企業に、代替的なpayroll taxを課す。

      医療保険プランを提供している企業は、州売上税分を負担することになるが、医療保険プランを提供していない企業は、その分を負担しないことになる。この不公平を是正するために、代替的なpayroll taxを課す。当然、この代替的なpayroll taxの負担水準の方が、州売上税分の負担水準よりも高くなるように設定する。

      代替的なpayroll taxは、医療保険プランを義務付けるものではない。企業に医療保険プランの提供を促し、従業員の保険加入を推進するためのものである。企業にとっては、従業員の保険加入一般を促すための一つの選択肢であるため、ERISA違反とはならない。(※「Topics2006年7月20日(3) MD州"Wal-Mart法案"敗訴」参照)

      代替的なpayroll taxを払えばいいということで、医療保険プランの提供を止めてしまう企業が出てくるのではないかとの懸念がある。しかし、次のような理由により、提供を止める企業はないと見ている。

      1. CalPrimeの対象者は、低所得者層に限られている。
      2. CalPrime加入が認められるまでには、待機期間が設けられる。
      3. 代替的なpayroll taxよりも、魅力的な保険商品が開発される。
      4. 既に医療保険プランを提供している企業は、それが適切であると判断している。
      5. 州民に保険加入義務を課すことにより、企業もそれを促進しようと考える。

      州売上税、代替的なpayroll taxの推計は、下図(本文P.11)の通り。

      EX3


  4. 提案実現のための課題

    州基金及び新税の創設のための法案については、州議会の両院で、3分の2の賛成票が必要である。

    また、1988年に可決されたProposition 98により加州憲法が改正され、実質的に、「州憲法を改正しない限り、無保険者対策に新たな財源を創設することはできない」とされた。